マッチング完了報告!元お茶屋さんからモンゴルパン屋さんへ


家主の第2話でご紹介した建物が京都物語商店を通じて

新しい店主さんとマッチングし、お店を開かれました!

今回はそのお店を訪ね、家主さんから新しい借り手へと紡がれた物語に迫ります。

 

左京区の京都大学の近くにあるのが今回のお店。

もともとは、数十年間おばあさんが住みながらお茶屋さんをされていた建物でした。

そこに来られたのが、元々音楽祭などでモンゴルパンの移動式の屋台をされていた加藤さんご夫婦です。

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表が全面ガラス張りながら閉鎖的な土間空間になっていた建物が、

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このように、開放的で暖かな雰囲気のお店に改装され、人々の集いの場所になっていました。

「この建物を借りた時に『修理がたくさん必要だと思う』ということを聞いていたから

覚悟はしていたけれど、やはり時間も費用もかかりましたね。

それでも、友人から繋いでもらった縁のおかげもあり最低限の費用と時間でやれたんじゃないかと思います。」

と話された加藤さんご夫婦。

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モンゴルパン屋さんを初めてからお店を持つと決めるまで、

そしてそこから物件を探てこの建物に出会い、修繕をして開店をするまで、

どのように進めていったのでしょうか。

 

バンドマン時代 生計を立てるために始めたモンゴルパン屋さん

モンゴルパン屋さんを始めたのは、今から約20年弱前旦那さんがバンドマンだった頃なんだそう。

「昔バンドを組んで活動していた頃、バンドだけでは生計を立てられなかったんです。

だから、カレー屋、大工、左官…できることは何でもやっていました。

そんな時に、内モンゴルから来ていた友人に教えてもらったモンゴルパンを、

音楽祭などで屋台販売してみたところ、

よく売れ、生活費をまかなえるようになったことがきっかけでしたね。」

と加藤さんは話されました。

加藤さんは、バンド活動で全国を回る中で出会った美味しい料理を舌で覚え、

自ら改良したりして作ることが得意なんだそうで、

それらの料理をケータリングとして販売していたこともあるんだそう。

そんな色々な料理から来た知恵を生かした加藤さんのモンゴルパンは、オリジナルのもの。

加藤さん自ら育てた無農薬の野菜と甘辛いソースは相性バッチリで、一度食べたらリピーターになるお客さんも多いんだとか。

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そこから加藤さんはバンドを辞め、音楽祭やマルシェ、カフェなどで

モンゴルパン屋さんを出店するようになり、奥さんと結婚。

京都の左京区の別の飲食店でランチ営業をしたりする中で、

当時は別の仕事も同時にしていた奥さんと「二人で同じ仕事をできた方が楽しいだろうね。」という話になり、

お店を出すことに決めたんだそう。

 

いろんなご縁に導かれてこの建物に出会った

このお店に出会われたのは、古くからの友達の紹介で京都物語商店を知ったから。

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「お店を出そうと決めてから、岡山や、大阪などいろいろと調べていたところで、

京都も探してみたんです。雰囲気が好きだったこともあり特に左京区で重点的に探していました。

でも、左京区は家賃が高いことも多いですよね。

左京区は無理かなあと思っていたところにこのお店の近くに住む古くからの友人から

『左京区でお店を出したいのなら、ボロボロで修繕が必要だが、家賃が安い物件がある。』

という話を聞きました。大工の経験もあり、自分でお店を作りたいと思っていたから、

僕たちにぴったりの建物だと思い、ここに決めました。」

そんな風に話されました。

 

友人たちの手を借りながら改装されたお店

実はこの建物、お店を出したい複数の方が借りようと見学に来てくれたのですが、

その方たちのほとんどが「修繕にたくさん費用がかかりそうだから、踏み切れない。」

という理由で借りるのを断念されていました。

加藤さんご夫婦もそれを承知でしたが、自分たち二人の力で修繕をするつもりで借りることを決め、

極力業者に頼まずに修繕を始めたんだそうです。

そんな風に「できることは極力自分でやる」という想定だったのにもかかわらず、

修繕を始めると、資材を譲ってもらえたり内装作業を手伝ってもらえたり…

たくさんの友人の手を借り、たった5ヶ月で開店することができたんだとか。

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こんな風だった空間は、

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私たちが見に行った時には、こんな風に姿を変えていました。

同じ空間とは思えないほどの改装っぷりに一番驚かれていたのは加藤さんご夫婦のようで、

「僕たちも、こんなに早くこんなに素敵な空間にできるとは、思いもよらなかったんです。

完成図はざっくりとできていたのですが、細部は手伝いたいと申し出てくれた友人たちに任せました。

そうすると、思い思いのやり方で楽しみながら作ってくれたんです。」と話されました。

作業を手伝ってもらっただけでなく、建材や電化製品も譲り受けたものが多いようで、

飲食店の廃業の時に冷蔵庫などをもらい、映画関係の仕事の方にセットで使った木材も譲り受けたそう。

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こんな風にたくさんの人のご縁をいただいて、完成したのがこのお店なんだだそうです。

 

友人を大切にしながら、気張りすぎず続ける

少し聞いただけでも、思いもよらないたくさんのご縁の中で造られたこのお店。

移動屋台の時代から今まで20年弱続けてきたモンゴルパン屋さんだからこそ、

お客さんはたくさんいて今でも遠方から訪ねて来てくださるんだそう。

「こんな風にお店を始めて続ける秘訣はなんですか。」とお聞きしたところ、

「僕たちは、改装するときも自分でやるって決めていたし、

お店も大繁盛を目指しているんじゃなくって、いろんな料理を実験して

お客さんや友人との会話を楽しみながら”だらだら”とやっていけたらと思っているから…。

参考になるかはわからないけど、」と話された後に、ボソっとつぶやかれたのは、

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「まぁ、友人を大切にしよう、ということくらいじゃないかな。」とおっしゃいました。

冗談っぽくおっしゃったこの一言に、お二人なりの続ける工夫が詰まっているのではないでしょうか。

 

『友人を大切にしながら、無理せずに、やる。』

シンプルながら忘れがちなことを淡々と守りながらお店をされているのが、加藤さんご夫婦のようです。

そんなご夫婦のお店、ぜひ一度訪れてみてください。

(ライター:大西芽衣)