第14話 犬を中心に人が集い店が集う場を作りたい
今回ご紹介するのは、経験や知識に裏打ちされた戦略を使い、ご縁を大切にしながら
移動式ドッグサロンを運営されている株式会社 薫風舎(くんぷうしゃ)の斎藤 裕子さんです。
様々な企業でのキャリアを活かして生まれた移動式ドックサロン
2016年の9月より、犬を飼われているお宅を訪問し改装した車両の中で
シャンプーやトリミングのサービスを行う「移動式ドックサロン」をされている斎藤さん。
「私はこの事業を始めるまで、新聞社や出版、外資系損保、通販など様々な業界で
営業やマーケティング、事業の立ち上げなどの仕事をしていました。
ある時『定年後も自分で稼いでいけるように、早めに事業を始められたら』と思い立ち、構想を練っていたんです。
私が犬を飼っていることもありペット業界を調べ始めたところ、
今から始める私でも技能の習得が比較的早く、楽しく働けるのではないかと思い、ペット業界で事業をすることを決めました。
そんな矢先に、企業の早期退職制度の話を受けて退職を決め、さらなるリサーチを行っていく過程で
飼い主の高齢化や女性の働き口の不足などのことを考えて、移動式ドッグサロンに行き着きました。」と話されました。
育児と両立したい女性たちにも働きやすく車一台から始められるのが魅力
清潔な車内には、シャワーや換気扇、クーラーなどサロンに必要な装備がすべて揃っており、
運転免許と営業に必要な京都市の資格(動物取扱業)さえあれば車一台から事業を始められるのだとか。
「女性が働くのって、難しいですよね。出産や育児で時間に自由が利かないとなると、選べる職種も限られ、
働けても低賃金だったり。そんな女性たちにとってもこの事業は、比較的始めやすいビジネスだと思うんです。
資格も最短で半年もあれば取れますし、車を数人でシェアすれば、自分の働ける時間で収入を得ることができる。
今は、まず私が実際にやってみて販路を拡大している段階ですが、ゆくゆくは誰かにこの事業主になってもらって
それぞれの生活に合わせて働ける環境を作って行けたら素敵だなと思っています。」とお話いただきました。
高齢の飼い主さんにも使いやすくペットを健康に保てるサービスを
そしてこの移動式ドックサロンは、ペットを大切にしたいけどお世話やサロン通いが難しい高齢の飼い主さんに
たくさん使っていただけるような事業にしていきたいんだそう。
「2000年代のブームを経て、ペットの高齢化のピークが2018年に控えています。
これってつまり、ペットの飼い主さんも、ペットも、両方が高齢化しているということなんですよ。
私自身も犬を飼い始めて、ご近所さんと仲良くなれたり仕事の疲れが癒されたりと、犬には本当に感謝しているんです。
だからこそ、散歩の時に出会ったおばあちゃまの『ペットをサロンに連れていくのが大変で。』という声に、
高齢の飼い主さんに向けた”移動式ドックサロン”という形で応えたいと思ったんです。」とお話しいただきました。
移動式ペットサロンとホームステイ型ペットホテルを中心に様々なペット関係のお店が集う場所
そんな斎藤さんは、移動式ペットサロンの拠点として、新たに着手する予定のホームステイ型ペットホテルとして
そして、条件さえ許せば、ペットビジネスであるかどうかにかかわらず、例えばカフェや本屋さん、ネットで物販している方など、
幅広いジャンルで、今事業をされている方や今後事業をしていきたい方と共有するためのスペースを探されているんだとか。
「車庫があり、住居使用も可能で、複数人共同で使うことができる広い空間がベストです。
車庫があれば移動式ドックサロンの車を停めることができ、そのお店の中で車内設備の充電ができますし、
住むことができればペットホテルとして24時間体制でペットを見ることができ、
そして、広めの空間があれば、その場所を他の事業者さんと共有することができますよね。」と話されました。
他の事業者さんと共有して使うというところにも、斎藤さんの想いがたくさん詰まっているようで、
「私は、人とのご縁を大切に、たくさんの方と関わりながら働いていきたいと思っています。
だから移動式ペットサロンやホームステイ型ペットホテルも、どなたかと一緒にやっていければ、と。
女性たちが自分の使える時間内で働けるよう移動式ドッグサロンを始めてくださったら、仕事の仲間もでき
きちんと収入も得られて楽しく働けるかもしれませんし、
高齢の方で『看取れるかわからないから』という理由でペットを飼うのを控えている方に働く場所として一緒に参加していただければ、
新たな生きがいになるかもしれませんよね。だからこそ、『絶対にこうしたい』という構想は作らないようにしています。
みんなに愛され金銭面だけではないやりがいのある事業を生み出していきたいからこそ、
たくさんの可能性の中から人との出会いを通して、柔軟に今後の構想や場所の使い方を変化させていきたいです。」
と話してくださいました。
斎藤さんを中心に、さまざまな分野の事業者が集い、場所を共有していく。そんな空間をイメージされているんだとか。
「ペットを搬送することができる車があるので、アクセスはそこまで気にしていませんが、環境は大切にしたいです。
ペットの出入りがあるため、騒音や臭いなどで周囲の方にご迷惑をかけないところで、
なおかつペットにとってもくつろげるような広くてゆったりとした場所にしていきたいです。
とはいえ、車庫や住居可などさまざまな条件もあり、ペットの出入りを許していただける空間はそこまで多くないはず。
自然が豊かだったり、建物が面白い形だったりと、全てが条件通りでなくともとびきり面白い特徴のあるお店ならそれで十分です。」
豊かに柔軟に、それでいて今までのキャリアを活かして戦略的に事業を進めていらっしゃる斎藤さん。
そんな斎藤さんなら、お店をお貸しするのも心強いのではないでしょうか?
また、斎藤さんは現在一緒に事業を進めてくれる方も募集されています。
斎藤さんが一緒に物語を紡げる家主さんやお仲間に出会えますよう、祈っています。
(ライター:大西芽衣)