第27話 素敵な親子が営んでいた染料屋さんビル一棟
西院駅から南に５分歩くと、赤いテントの可愛い４階建てビルが出てきます。
ここは昭和56年から33年間、一棟丸々カラーハウスという染料屋さんのビルでした。
こちらのお二人が、家主の中東（なかひがし）さん親子です。
娘さんは染色作家さんで、教室の先生もされています。
中東さん一家の本業は、自社独自の染料や糊材（こりょう）を作り、
洋服や着物の工場に卸す会社の経営でした。
創業されて47年目、染色の魅力を個人のお客さんにも広めたいというお父様の意向で、
カラーハウスをオープンされました。
ビルの１階は染色工芸材料の店舗、2階は染色教室、3階は作品置き場や着物を染める場所、
4階は娘さんのアトリエとして営まれていました。
生徒さんの作品や商品が並べられていたというショーウィンドウからは、
染色工芸材料の店舗スペースに優しい光が入り込みます。
お父様が若い人たちと話すことが好きだったそうで、
学生割引で商品を販売されたり、大学の課題提出の時期には学生たちがたむろして
一緒にコーヒーを飲みながらお話しすることもしばしばだったとか。
営業当時には、奥に学生たちと集まった思い出の大机が置かれていました。
元々は布を切るための机だったということで、
左奥の埋め込み棚にはロールになった布が入っていて、棚の奥行きは120cmもあります。
棚の右隣にある扉の奥は簡易なキッチンで、そのまた奥には屋外倉庫があります。
玄関へ戻ると当時のままの靴箱が置かれている、染色教室への階段があります。
階段を上ったところには教室のサインも。
教室の大きなキッチンは、染色した布を洗うのに使われていました。
３０年間、週に５回日替わりで担当の先生がいらっしゃって教室が開かれ、
生徒さんたちの個展兼即売会も年に１回、外部のギャラリーで行われていたそうです。
３０年間の写真を見せていただく中で、この空間に素敵な時間が流れていたことが伝わってきました。
ほとんどの生徒さんが長年続けられていたという教室同様、建物自体も大切にされてきたことがわかります。
３階のスペースには、作品を置いていた棚や、着物を乾かすのに使われていたポールがあり、
いくつかの部屋に間仕切られています。
4階の娘さんの元アトリエには、小部屋と新調されたトイレがあります。
屋上の防水も新しくされました。本当に大切にされている建物であることがわかります。
お父様がお亡くなりになったあと、中東さん親子は廃業を決意されました。
小売はこのビルで始まり33年でしたが、本業は創業80年でした。
お二人は「きれいに始末をつけたい」と、従業員の方々が定年になるまで本業と共に続けられ、
建物内で使われていた道具たちは、若い着物作家のご夫婦の元へ、
教室の生徒さんたちはそのまま担当されていた先生方の個人教室へ、
オリジナルの色たちは、作り方のレシピと共に他の染料屋さんへ送られていきました。
「現在西院駅は改築中で、平成３２年度には駅ビルが完成し、
保育施設なども作られ、公共交通機関の乗り継ぎも改善されるということで、
町としても活性化していきそうで楽しみです。」と、お母様。
（外部リンク：西院駅周辺地域公共交通総合連携計画）
「父も若い作家がこのビルに出入りしてくれることを望んでいました。」と娘さん。
このビルを大切に使ってくれる方で、若者も出入りする場所になるとなお嬉しいね、
と中東さん親子と３人でお話ししました。
通りとしては美容室やコンビニが多いですが、
少し道に入ると銭湯や酒屋、助産師事務所などの古いお店や、
個性的な中華料理屋さんやカレー屋さんなどのお店もあります。
染色のこと、従業員さんのこと、お客さまのことを大切にされてきた、とても素敵な家主さんのビルです。
一棟まるごと借りられる方を探されていますが、
京都物語商店としてもいろんな形での相談に乗ることができればと考えています。
どうか素敵な借り手が見つかりますように。
| こんな人にオススメ | ビル一棟をお探しの人、 広いスペースを探している人、 屋上が欲しい人、 アクセス重視の人 |
| 物件の詳細 | 家賃や業種など相談に応じてくださいます |
| 間取り | 300平米、4階建 |
| 初期投資 | 保証金 賃料の6ヶ月分 |
| 月使用料 | 360,000円（税別、応相談） |
| 所在地 | 右京区 |
| DIYレベル | ★★★☆☆ |
（ライター：めい）