“文化住宅”という言葉には、戦後の都市化と大衆の住生活向上の歴史が刻まれています。現代において、その時代の建物の多くが建築的価値を見失っている現状があります。
本プロジェクトでは、築30〜50年の小規模住宅、特に路地奥などの再建築不可物件を対象に、それらを「現代の生活文化」にあわせて再編集することを目指しました。スケルトンの空間構造はなるべく活かしつつ、水回りや間取りを柔軟に更新。過剰な内装を省き、住まい手が自身の生活様式に合わせて手を加えられる“余白のある住まい”を意識して設計しています。
リノベーションの過程では、地域の大工や職人とともに工事を進め、流通材ではなく地域の既製品や古材を活用。建物だけでなく施工プロセスにも“地に足のついた文化”を持ち込みます。また、入居者とのコミュニケーションを通して、地域との関係性を築く取り組みも並行して行います。
単に美しく生まれ変わった物件を提供するのではなく、住まいが個人と地域の“媒介”となること。住むことで、その人自身の価値観がにじみ出し、それが結果的に地域の風景を変える──そうした「小さな居住の更新」を積み重ねることで、都市の再構成を試みています。