第8話 糸で結ぶ33メートルに、紡ぎ手もうひとり
京都市内にある「島原」というまちをご存知でしょうか?
江戸時代以来、花街(かがい)と呼ばれ、歌舞音曲を伴う遊宴で賑わい
新撰組や勤王の志士などにも愛された、歴史的な文化交流のあるまちです。
しかし、島原大門など昔の面影を残しつつも、今では空き家や住宅が入り交じる地域となっています。
そこで、この島原の一角、かつて繊維関係のお店が建ち並んでいた通を発信地に
昔のような活気を取り戻そう!と、『糸』をコンセプトにした文化交流スペース
「糸でつながる33mのマーケット itonowa(イトノワ)」が2015年10月3日にオープンしました。
itonowaのはじまり
はじまりは、お隣の呉服屋 村田 敬太郎(むらた けいたろう)さん。
広告会社での勤務経験を経て、5年前に京都に帰ってきました。
当時からお隣が空き家になっているのを知り、この場所を活用して
空き家と高齢化が増すこの地域に何か良いアプローチができないかと思ったそうです。
そんな想いを抱えるとき、京町家の再生をメインとしている設計事務所の女性と出逢い
物件の相談をしたところ、強く賛同してくれ、一緒に企画を考えることになりました。
また、この建物は、古くから毎年夏「地蔵盆」の会場として提供していた経緯もあり
そのような歴史も紡ぎ「ここを地域に開かれた場所に」という想いが募りました。
「空き家活用×まちづくり」モデル・プロジェクトとして
思い描くものはあるけれど、さて資金をどうしよう?
そんなタイミングで、ちょうど京都市による空き家活用促進の助成金として
2014年度「空き家活用×まちづくり」モデル・プロジェクトの公募が開始されていました。
この助成金は、今までに一番大きく、京都市としても非常に力の入った公募。
その分、判断基準も厳しく、希望者も少なくないため、採択されるのは至難の業でした。
しかも、その公募を知ったのは、なんと締め切り1ヶ月前。
急ピッチで、思い描いていたイメージを言語化し、企画書へと落とし込んでいきました。
さらに、地域とどう関わるかという点でアートディレクターの男性を仲間として迎えました。
その後も、不動産・税務、各方面の心強いメンバーを巻き込み、強力なチームに。
そして公開プレゼンによる審査を経て、見事採択。想いが実現へと加速していったのです。
糸でつながる33mのマーケット itonowa(イトノワ)
採択から約1年後、ついにオープンの日を迎えたitonowa。
前後に連なる2つの古民家を改装、その奥行きは33mです。
現在は、糸に関連した商品を扱う5つのお店と、入口横にコーヒースタンド、
中庭にはたくさんの鉢を並べた多肉植物屋さんが入っています。
大学生たちの協力を受けて、オープン前に周辺地域600世帯に挨拶まわりをしたそうです。
そのおかげもあって、itonowaは今、近所の小さな子供から手押し車で訪れるおばあちゃんまで
地域のひとたちに広く親しまれる、ゆるやかな文化交流の場になりつつあります。
「糸」に関するお店たち、紡ぎ手をあともうひとり
現在すでに入っている5つの糸に関するお店、いったいどんなお店なのでしょうか?
手前の建物には、アンティーク着物などを扱った古道具・アートデコレーションのお店。
奥の建物には、子供着物・古布を活かした骨董ギャラリー・糸を使ったアート雑貨、
ヴィンテージウエディングドレスなど、様々な個性豊かなお店が入っています。
そして、奥の建物の2階の真ん中にある一室が、今回借り主を募集しているお部屋です。
今は「和」に関するお店が多いので、洋裁や刺繍など「洋」に関するお店とのご縁があれば
よりお互いの個性を引き立て合えるかもしれませんね。
図面「SHOP4」と書かれている、赤枠の内側が今回募集しているお部屋。
お部屋は既にリフォーム済みなので、変更できるところは、壁の色・床の色・照明です。
窓がなくコンパクト。現在付いている北欧アンティークの照明はお譲りいただくことができます。
島原はitonowaを起点に、これから変わろうとしはじめているまち。
今は人通りが多いとは言えず、お商売が簡単な土地ではありません。
それでも、itonowaという場を運営するひとたち皆で意見を交わして
一緒になってこのまちの未来をつくっていこうとする
そんな素敵なもうひとりの紡ぎ手との出逢いをお待ちしております。
こんな人にオススメ | 糸に関するものづくりのお仕事を営まれる方で、これからお店をちょうど持とうと考えていた方。 特に、洋裁や刺繍など。 |
建物の詳細 | 既に全面リノベーション済み。好みで、壁の色・床の色・照明を変更可。(塗装の費用は応相談) |
間取り | 図面参照(正方形、窓なし) |
広さ | たて約2.8m × よこ約2.8m |
初期費用(うち返金) | 保証金として賃料の1ヶ月分 |
月使用料 | お問い合わせをいただいた後、村田さんへ直接ご確認いただく流れとなります。 |
所在地 | 下京区 |
DIYレベル | ★☆☆☆☆ |
(ライター:FootPrints 前田 有佳利)