第5話 多様性を育む「みんなの公園」をつくりたい


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まずは、今からするお話を、ほんのちょっと想像してみてください。

もしあなたの近くにこんな公園があったら、足を運んでみたいですか?

 

小さな子供から、おじいちゃんおばあちゃん、障がい者の方も

様々なひとが公園に咲く花や緑をきっかけにお喋りを交わしたり

公園にある移動販売の珈琲屋であたたかい珈琲が売られ、皆でほっこり味わったり。

公園という場を介して繋がる、豊かな多様性を持つ、まちのコミュニティ。

 

そんな場所が身近にあったら素敵ですよね。

今回ご紹介したいのは、そんな多様性を育む「みんなの公園」を京都市内につくりたい

という想いを持った森口 誠(もりぐち まこと)さんです。

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植物と珈琲とパンで繋がる福祉事業

森口さんは「福祉」を軸に、多様なひとの居場所をつくる事業を展開しています。

植物と珈琲とパンをキーワードに、時にはギャラリーも開きながら

障がいのあるひとたちの働く場所を生み出してきました。

旅と豆と水
2012年から開始した、植物と珈琲の移動販売式のお店。

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2015年から開始した、植物とパンを販売する向日市にあるお店。
運営してくれる仲間を募集しています。

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福祉事業を展開する理由

あるひとは非常に正確な体内時計でコーヒーロースターを扱うことができ

あるひとは均等に苗を小分けにすることができる。ひとりひとりが持つ得意分野。

違いがあるからこそ生まれる強みを認め合って互いに活かし合えたら

そんな想いで事業を続けています。

 

「もっと混ざり合って化学反応が起きていく社会になったら良いなって思うんです。

ひとりひとりが持つ価値観を社会にしっかり混ぜ込みたい。」

そう森口さんはおっしゃいます。

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森口さんの原点にあるもの

どうして森口さんはこういった事業を展開しようと思ったのでしょうか?

 

実は、偶然にも小さい頃から周囲に障がいのある友人が多い環境で育ったそう。

一緒だと思っていた障がいのある友人から、ある日「君と僕は一緒じゃない」と言われ

勝手に”同じ”と思ってしまっていたこと自体が間違いだと気付かされました。

 

そこから、違いがあるからこそどう組み合わさるかを考えるべきだと思い

植物や動物を介して福祉事業を進める会社へ7年間勤務。そこで学んだ経験が今の糧となっています。

その後、福祉事業所の立ち上げを行い、2012年の「旅と豆と水」、2015年「3sun」と活動の幅を広げています。

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ご一緒にいかがですか?

「多様な交流をデザインした『みんなの公園』を京都市内でぜひつくりたい。

その公園にひとが集まれば、きっと真似をしてくれるひとが現れ

素敵なお店が公園周辺にも増えはじめると思うんです。」

 

植物を育てるのが大好きな森口さんは、コミュニティの広がりを

まるで植物の種が風に運ばれ、緑が広がるようにイメージして

楽しそうに話してくださいます。

 

損得勘定ではなく、純粋に社会の豊かなあるべき暮らしをつくりたい

森口さんのこの想いに共鳴してくださる素敵な貸し主さま、

ご縁をお待ちしております。

 

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(ライター:FootPrints 前田 有佳利

第8話 糸で結ぶ33メートルに、紡ぎ手もうひとり


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京都市内にある「島原」というまちをご存知でしょうか?

江戸時代以来、花街(かがい)と呼ばれ、歌舞音曲を伴う遊宴で賑わい

新撰組や勤王の志士などにも愛された、歴史的な文化交流のあるまちです。

しかし、島原大門など昔の面影を残しつつも、今では空き家や住宅が入り交じる地域となっています。

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そこで、この島原の一角、かつて繊維関係のお店が建ち並んでいた通を発信地に

昔のような活気を取り戻そう!と、『糸』をコンセプトにした文化交流スペース

糸でつながる33mのマーケット itonowa(イトノワ)」が2015年10月3日にオープンしました。

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itonowaのはじまり

はじまりは、お隣の呉服屋  村田 敬太郎(むらた けいたろう)さん。

広告会社での勤務経験を経て、5年前に京都に帰ってきました。

当時からお隣が空き家になっているのを知り、この場所を活用して

空き家と高齢化が増すこの地域に何か良いアプローチができないかと思ったそうです。

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そんな想いを抱えるとき、京町家の再生をメインとしている設計事務所の女性と出逢い

物件の相談をしたところ、強く賛同してくれ、一緒に企画を考えることになりました。

 

また、この建物は、古くから毎年夏「地蔵盆」の会場として提供していた経緯もあり

そのような歴史も紡ぎ「ここを地域に開かれた場所に」という想いが募りました。

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「空き家活用×まちづくり」モデル・プロジェクトとして

思い描くものはあるけれど、さて資金をどうしよう?

そんなタイミングで、ちょうど京都市による空き家活用促進の助成金として

2014年度「空き家活用×まちづくり」モデル・プロジェクトの公募が開始されていました。

この助成金は、今までに一番大きく、京都市としても非常に力の入った公募。

その分、判断基準も厳しく、希望者も少なくないため、採択されるのは至難の業でした。

 

しかも、その公募を知ったのは、なんと締め切り1ヶ月前。

急ピッチで、思い描いていたイメージを言語化し、企画書へと落とし込んでいきました。

さらに、地域とどう関わるかという点でアートディレクターの男性を仲間として迎えました。

その後も、不動産・税務、各方面の心強いメンバーを巻き込み、強力なチームに。

そして公開プレゼンによる審査を経て、見事採択。想いが実現へと加速していったのです。

 

糸でつながる33mのマーケット itonowa(イトノワ)

採択から約1年後、ついにオープンの日を迎えたitonowa。

前後に連なる2つの古民家を改装、その奥行きは33mです。

現在は、糸に関連した商品を扱う5つのお店と、入口横にコーヒースタンド、

中庭にはたくさんの鉢を並べた多肉植物屋さんが入っています。

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大学生たちの協力を受けて、オープン前に周辺地域600世帯に挨拶まわりをしたそうです。

そのおかげもあって、itonowaは今、近所の小さな子供から手押し車で訪れるおばあちゃんまで

地域のひとたちに広く親しまれる、ゆるやかな文化交流の場になりつつあります。

 

「糸」に関するお店たち、紡ぎ手をあともうひとり

現在すでに入っている5つの糸に関するお店、いったいどんなお店なのでしょうか?

手前の建物には、アンティーク着物などを扱った古道具・アートデコレーションのお店。

奥の建物には、子供着物・古布を活かした骨董ギャラリー・糸を使ったアート雑貨、

ヴィンテージウエディングドレスなど、様々な個性豊かなお店が入っています。

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そして、奥の建物の2階の真ん中にある一室が、今回借り主を募集しているお部屋です。

今は「和」に関するお店が多いので、洋裁や刺繍など「洋」に関するお店とのご縁があれば

よりお互いの個性を引き立て合えるかもしれませんね。

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図面「SHOP4」と書かれている、赤枠の内側が今回募集しているお部屋。

お部屋は既にリフォーム済みなので、変更できるところは、壁の色・床の色・照明です。

窓がなくコンパクト。現在付いている北欧アンティークの照明はお譲りいただくことができます。

 

島原はitonowaを起点に、これから変わろうとしはじめているまち。

今は人通りが多いとは言えず、お商売が簡単な土地ではありません。

それでも、itonowaという場を運営するひとたち皆で意見を交わして

一緒になってこのまちの未来をつくっていこうとする

そんな素敵なもうひとりの紡ぎ手との出逢いをお待ちしております。

こんな人にオススメ糸に関するものづくりのお仕事を営まれる方で、これからお店をちょうど持とうと考えていた方。
特に、洋裁や刺繍など。
建物の詳細既に全面リノベーション済み。好みで、壁の色・床の色・照明を変更可。(塗装の費用は応相談)
間取り図面参照(正方形、窓なし)
広さたて約2.8m × よこ約2.8m
初期費用(うち返金)保証金として賃料の1ヶ月分
月使用料お問い合わせをいただいた後、村田さんへ直接ご確認いただく流れとなります。
所在地下京区
DIYレベル★☆☆☆☆

(ライター:FootPrints 前田 有佳利

第1話 二人の地元に根付く、珈琲のある豊かな場所をつくりたい


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涼しい秋晴れの午前9時。

京都市営地下鉄東西線 椥辻駅の地上に上がると、

早速、香ばしいかおりが漂ってきました。

椥辻のメインストリートが交わる交差点を一望できる場所に

珈琲製造・卸・小売業を営む弘陽珈煎さんはお店を構えていらっしゃいます。

椥辻駅の朝の顔です。

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こちらが弘陽珈煎店主の山本さん。

お店で焙煎したコーヒー豆をレストランやカフェ、オフィスに卸されたり、

店内にてコーヒー豆の小売をしていらっしゃいます。

なんと、卸されている豆はレストランやカフェごとに合ったオリジナルブレンド。

一般のお客様の中にも、ブレンドの割合を細かく指定して注文されるツウな方もいらっしゃるとのこと!

 

ー始められたきっかけは?ー

大学生の時から喫茶店が好きで、将来コーヒーを提供できる店を持ちたいと思っていました。

新卒の時にはコーヒーメーカーを第1志望に就職活動をしましたが、

当時はバブル崩壊直後で不安定ということもあり、

なかなか内定をいただけず、幸いにも内定を頂いていた住宅設備の会社に進みました。

そこに就職した時もずっと頭のどこかでコーヒーのことを考えていて、

就職4年目にしてコーヒーメーカーに転職をしたんです。

そこから独立を前提にコーヒーの営業の仕事をしていました。

たまに工場での仕事があったのですが、

もっぱら”どうコーヒーを焙煎しているのか”ということへの関心が大きかったこと覚えています。

このコーヒーメーカーで4年勤めたのち、独立しました。

14年前こちらのコーヒー豆店をオープンするまでは草津で焙煎し、

豆の卸、配達業のみでスタートしました。

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創業5年目に自宅のある椥辻にある今の店の物件と出会い、

草津から引っ越してきて、この小売店をスタートさせました。

自宅から近いということもあり、奥さんも運営に加わり、

夫婦二人三脚で運営しています。

駅前で人通りも多く、一般の人も気軽に買いに来れるお店になり、

近所のレストランやカフェのお店とも仲良くさせていただいています。

先日、椥辻に越してきて9周年を迎えました。

草津時代を合わせると14年目になります。

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(毎日暑い器械の前で焙煎されていることがよくわかります。)


ーどんなお店をつくりたいですか?ー

実は妻とは小中高の同級生で地元が一緒なんです。

大学生になって友達に引き合わしてもらうまでは、一言も喋ったことなかった仲なんですが、

再び出会ってから意気投合し、結婚しました。

今の私たちの夢は地元である烏丸鞍馬口近辺に

地域に根ざしたコーヒーを提供できるお店を作ることなんです。


ーその場所でどんな人とどう関わっていきたいですか?ー

町家や古民家を使ったような、落ち着ける居場所をつくりたいです。

自分たちの生まれ育った地元の人と毎日顔を合わせ、

今までずっと作ってきたコーヒーを

味わってもらえたら、とても幸せなんです。

地域に根ざして長く続けていけるような場所にしたいです。

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今のお店でもご近所さんが楽しみにしている弘陽珈煎だより。

目の前でお客様の「美味しい」が聞ける店舗を、

お二人が運営される日が来ることが楽しみです。

(ライター:扇沢