第1話 組み合わせのアイデアで商店街の活性化を


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商店街でお買い物をしたり、ふらりと立ち寄ったりすることはありますか。

昭和の時代にはたくさんの人々が訪れ賑わっていた商店街ですが

時代の移り変わりとともに、取り巻く環境は非常に厳しくなっています。

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そんな逆境の中、時代の変化に合わせ、新たなアイデアを取り入れながら商店街の活性化を図ろうと

日々アンテナを張っている店主が、七条中央サービス会にいらっしゃいます。

産地直送の鮮魚を取り扱う「魚晴(うおせい)」の店主 岸田 智之(きしだ さとし)さんです。

 

魚晴のある商店街について

京都駅の西側にある梅小路界わいには、6つの商店街が存在しています。

七西甲子会、西七繁栄会、七条千本繁栄会、七条センター商店街、嶋原商店街

そして魚晴のある七条中央サービス会です。

 

七条中央サービス会は、京都市中央卸売市場に隣接しており

京都音楽博覧会やB級グルメなどのイベント会場として賑わう梅小路公園から

歩いて10分の場所に位置しています。

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現在、30店舗のお店が商店街の会員として参加しており

一丸となって商店街や各店舗の取り組みを掲載したチラシを作成したり

京都新聞に掲載したりなどして、商店街の利用者が増すよう努めています。

 

今回ご紹介したい本題は、現状の商店街の取り組みではなく

岸田さんご自身がされている取組と、今後の商店街全体に対して望む想いです。

 

魚晴 岸田さんについて

魚晴は創業百年以上の歴史を誇る、産地直送の鮮魚を取り扱うお店です。

店頭ではお刺身や焼き魚、魚料理の入ったお弁当などが販売されています。

岸田さんは、代々受け継がれるこのお店を営まれつつ、商店街の会長もされています。

また、地域活性化として「ぐるり梅小路」という活動を立ち上げた経験もあり

現在、梅小路活性化委員会の一員でもあります。

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岸田さんのひいおじいさんは、担ぎ籠に魚を入れて売り歩く行商をしていました。

にぎやかな場所に出向くことで、魚を売りつつ、行き交う文字を目に焼き付け

積極的に読み書きの勉強の機会にもしていたそうです。

 

そんな機転が利くひいおじいさんの血を継ぐように、岸田さんもまた柔軟なアイデアに溢れています。

店主としてお店に留まるのではなく、時間があれば各方面へ出向き

ひとに会って新たな情報を仕入れ、商店街活性化の次の一手に繋げようとしています。

 

今あるものと新しいもので生まれる “組み合わせのアイデア”

大きな変化は、資金もかかるためハードルが高いかもしれません。

そこで、今あるものを大きく変えることなく、すぐに試みやすい商店街活性化の手法として

岸田さんが今回教えてくださった取り組みがあります。それは「組み合わせのアイデア」です。

 

まず実際、魚晴で実施されたものとして『営業時間後の店頭立ち飲み企画』があります。

参加費を決めて、お刺身やお酒を振る舞い、店頭で立ち飲みをするというイベントです。

約18名が参加し、皆交流を楽しんでいたそう。このような企画が商店街全体で出来たら素敵ですよね。

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別の商店主との場所のシェア(=共有)

また、今後商店街でこんな取り組みができたら良いな、と岸田さんがお話くださったのは

『営業時間外や普段使われていないスペースを、新たな商店主とシェアする』というもの。

商店街の店舗には、今はお店を閉め、在庫の物置となってスペースを余しているケースもあるそう。

そこで、空きスペースの一部をお借りして、別のお商売の方が新たにお店を開くという発想です。

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営業時間外の活用や、空きスペースをお借りするという、組み合わせのアイデアがあれば

学生さんと期間限定の文化祭のようなイベントを開催することもできるかもしれませんし、

自分のお店を持ちたいという作り手の方が少額の資金からお店をはじめられるかもしれません。

 

こういったアイデアや、この商店街自体に興味をお持ちいただける方がいらっしゃいましたら

一度、京都物語商店までお問い合わせください。

商店街活性化について積極的に取り組まれている会長 岸田さんへ

こんなお声があるのですが!とご紹介させていただきます。

 

商店街がもともと持つ、多様な店主の集まった素敵なコミュニティの輪が

広がっていきますことを心から願っております。

 

(ライター:FootPrints 前田 有佳利

第9話 五条の良さを一緒に伝えてくれるひとへ


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四条や河原町など、賑わいあるまちの中心地から一駅南へ。

高瀬川沿いの道を歩いていくと、落ち着いた住宅街に出逢います。

時折、川をゆったりと泳ぐ鴨の姿を見ることもできます。

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古く味わいあるお茶屋さんや老舗旅館なども点在するまちなみ。

今回ご紹介するのは、このまち 五条にある一軒家です。

ご紹介くださるのは、物件近くに建つ「五条モール」を運営するさっこさんです。

 

そもそも「五条モール」とは

五条にある一軒の元お茶屋さんを改装した木造建築の小さなショッピングモール。

2013年9月にオープンしました。

「オセロ」という名前の、愛嬌たっぷりの看板猫が迎えてくれます。

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玄関入って左手のお部屋は、喫茶・酒場「えでん」。

定休日の水曜以外は12時から19時で営業しており

お茶をしたり、お酒を飲んだり、おばんざいも注文することができます。

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現在5つの部屋には、ニット作家さんのアトリエ、古本屋、

木工作家さんのアトリエ、レンタルスペースなどが入り

誰でも見学できるようにと、週末にお店を開放して、快く迎えてくれます。

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今回ご紹介したい物件について

さて、そんな「五条モール」の玄関口から、覗いてすぐの場所にあるのが今回の物件です。

歩いて1分も掛からない、同じ通の向かいの並びにある一軒の古民家です。

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2階建ての建物は、上下階ともに、それぞれクーラーが付いています。

1階には、4.5畳の洋室、台所とトイレ、3つの収納スペースがあります。

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土間があるため、1階の洋室を横切らずに2階へと向かうことができます。

いろんな方の個性とアイデアがうまく混ざり合いますよう

1階・2階、それぞれ別の方にお借りいただきたいですね。

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2階は和室、押入れ・床の間・板の間があり、全スペース合わせて6畳です。

天井がやや低く感じられるので、大家さんに直接相談いただいて

天井をぶち抜きにリノベーションできたら良いかもしれません。

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2階の和室横にあるお部屋は、さっこさんが物置として使用されているので

時々顔を合わせるさっこさんと、場所の運営について相談ができたりと

必然的に会話の機会が生まれやすい状況なのも良いところ。

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はじまりは 『みんなが “まちに通うきっかけ” をつくろう』

実はさっこさん、生まれは四国。なぜ五条というまちを大事にされているのでしょう?

20年前に大学で京都へ来ることになり、そのとき穏やかな町並みと交通の便の良さ

味のある小さなお店が点在するという地域の良さに惹かれ、五条に暮らすようになり

10年前に、五条川端東にて古道具屋を開いたそうです。

 

もっとお客さんに来てもらいたい、そんな最初の気持ちが発展していき

「ならばこのまちの良さを伝えて、まちに通うきっかけをもっとつくろう!」

と五条に点在する素敵なお店の情報を集めた手作りマップをつくりはじめました。

(マップは現在も更新して、つくり続けています)

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一緒にまちの良さを伝えてくれるひとを

今回の物件に関しても

「いろんなアイデアがあると思うので、使用イメージにあまり制限せず

“一緒になってまちの良さを伝えてくれる” そんな方にお借りいただけると嬉しいですね」

と、お話をくださいました。

 

五条という穏やかなまちの文化を一緒に見つめ、自ら良さを発見し

「五条モール」の皆さんとも積極的にアイデアを混ぜ合いながら

この物件を介して、地域の良さを伝えようとしてくださるひと。

そんな素敵な方からのご連絡を、心からお待ちしております。

 

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(間取り図作成:今井悠貴 氏)

こんな人にオススメ五条の良さを何らかの形で発信できる方。アトリエ、大学ゼミでの利用なども可。
建物の詳細築約40年の2階建ての古民家。
間取り図面参照。(1階と2階、別々の方にてご利用ください)
広さ1階洋室が約4.5畳。2階和室が6畳(押入・床の間・板の間含む)
初期費用(うち返金)敷金として家賃1ヶ月分[各階の家賃:3万円]
月使用料家賃、1階2階それぞれ3万円 ※電気、ガス、水道(光熱費)各自 実費支払
所在地下京区
DIYレベル★★★☆☆
入居条件店舗もしくはアトリエとして、週末(金・土・日)に場を開くことができる方。
一般の方に場所を見学させていただける方。
※入居審査あり

(ライター:FootPrints 前田 有佳利

第8話 糸で結ぶ33メートルに、紡ぎ手もうひとり


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京都市内にある「島原」というまちをご存知でしょうか?

江戸時代以来、花街(かがい)と呼ばれ、歌舞音曲を伴う遊宴で賑わい

新撰組や勤王の志士などにも愛された、歴史的な文化交流のあるまちです。

しかし、島原大門など昔の面影を残しつつも、今では空き家や住宅が入り交じる地域となっています。

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そこで、この島原の一角、かつて繊維関係のお店が建ち並んでいた通を発信地に

昔のような活気を取り戻そう!と、『糸』をコンセプトにした文化交流スペース

糸でつながる33mのマーケット itonowa(イトノワ)」が2015年10月3日にオープンしました。

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itonowaのはじまり

はじまりは、お隣の呉服屋  村田 敬太郎(むらた けいたろう)さん。

広告会社での勤務経験を経て、5年前に京都に帰ってきました。

当時からお隣が空き家になっているのを知り、この場所を活用して

空き家と高齢化が増すこの地域に何か良いアプローチができないかと思ったそうです。

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そんな想いを抱えるとき、京町家の再生をメインとしている設計事務所の女性と出逢い

物件の相談をしたところ、強く賛同してくれ、一緒に企画を考えることになりました。

 

また、この建物は、古くから毎年夏「地蔵盆」の会場として提供していた経緯もあり

そのような歴史も紡ぎ「ここを地域に開かれた場所に」という想いが募りました。

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「空き家活用×まちづくり」モデル・プロジェクトとして

思い描くものはあるけれど、さて資金をどうしよう?

そんなタイミングで、ちょうど京都市による空き家活用促進の助成金として

2014年度「空き家活用×まちづくり」モデル・プロジェクトの公募が開始されていました。

この助成金は、今までに一番大きく、京都市としても非常に力の入った公募。

その分、判断基準も厳しく、希望者も少なくないため、採択されるのは至難の業でした。

 

しかも、その公募を知ったのは、なんと締め切り1ヶ月前。

急ピッチで、思い描いていたイメージを言語化し、企画書へと落とし込んでいきました。

さらに、地域とどう関わるかという点でアートディレクターの男性を仲間として迎えました。

その後も、不動産・税務、各方面の心強いメンバーを巻き込み、強力なチームに。

そして公開プレゼンによる審査を経て、見事採択。想いが実現へと加速していったのです。

 

糸でつながる33mのマーケット itonowa(イトノワ)

採択から約1年後、ついにオープンの日を迎えたitonowa。

前後に連なる2つの古民家を改装、その奥行きは33mです。

現在は、糸に関連した商品を扱う5つのお店と、入口横にコーヒースタンド、

中庭にはたくさんの鉢を並べた多肉植物屋さんが入っています。

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大学生たちの協力を受けて、オープン前に周辺地域600世帯に挨拶まわりをしたそうです。

そのおかげもあって、itonowaは今、近所の小さな子供から手押し車で訪れるおばあちゃんまで

地域のひとたちに広く親しまれる、ゆるやかな文化交流の場になりつつあります。

 

「糸」に関するお店たち、紡ぎ手をあともうひとり

現在すでに入っている5つの糸に関するお店、いったいどんなお店なのでしょうか?

手前の建物には、アンティーク着物などを扱った古道具・アートデコレーションのお店。

奥の建物には、子供着物・古布を活かした骨董ギャラリー・糸を使ったアート雑貨、

ヴィンテージウエディングドレスなど、様々な個性豊かなお店が入っています。

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そして、奥の建物の2階の真ん中にある一室が、今回借り主を募集しているお部屋です。

今は「和」に関するお店が多いので、洋裁や刺繍など「洋」に関するお店とのご縁があれば

よりお互いの個性を引き立て合えるかもしれませんね。

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図面「SHOP4」と書かれている、赤枠の内側が今回募集しているお部屋。

お部屋は既にリフォーム済みなので、変更できるところは、壁の色・床の色・照明です。

窓がなくコンパクト。現在付いている北欧アンティークの照明はお譲りいただくことができます。

 

島原はitonowaを起点に、これから変わろうとしはじめているまち。

今は人通りが多いとは言えず、お商売が簡単な土地ではありません。

それでも、itonowaという場を運営するひとたち皆で意見を交わして

一緒になってこのまちの未来をつくっていこうとする

そんな素敵なもうひとりの紡ぎ手との出逢いをお待ちしております。

こんな人にオススメ糸に関するものづくりのお仕事を営まれる方で、これからお店をちょうど持とうと考えていた方。
特に、洋裁や刺繍など。
建物の詳細既に全面リノベーション済み。好みで、壁の色・床の色・照明を変更可。(塗装の費用は応相談)
間取り図面参照(正方形、窓なし)
広さたて約2.8m × よこ約2.8m
初期費用(うち返金)保証金として賃料の1ヶ月分
月使用料お問い合わせをいただいた後、村田さんへ直接ご確認いただく流れとなります。
所在地下京区
DIYレベル★☆☆☆☆

(ライター:FootPrints 前田 有佳利

(祝!)第2話 三世代来てくれる理容室がやりたい


(無事、西大路七条上がったところに決まられました!オープン後リンクも貼らせていただきます。)

 

小林さんからのお問い合わせがあった時、私は美容室ではなく理容室、というところにとても興味が沸きました。

イギリススタイルな髪型が一部の若者の中でブームになっていたことから、ものすごくおしゃれな理容室がまちなかにできていたり、

一方で地元に帰ればいつも洗髪の椅子に座って新聞を読むおっちゃんも見ていたことから、どういうお店をどういう方がされるのか気になりました。

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最初のきっかけは「儲かんぞ」

「中高時代通っていた理容室のおやじがめちゃくちゃ怖くてね、バイクで朝帰りする姿を見つけては『学校行っとるんか』って睨んでくるんですよ」

たまたま友達の紹介で通い始めた近所の理容室の話を懐かしそうに語る小林さん。

「びびりながらもずっとそこに通ってましたね。ある日将来の夢を聞かれて『選択肢がない』と言ったところ、

『理容師にならんか。儲かんぞ』って。高校生でしたからね、儲かるってんならやってみるかって、その道を選びました(笑)」

 

当時は多かった理容室

今でこそ男性も美容室に行く時代ですが、20年前当時は理容師さんも5、6人のお弟子さんを取っていたそう。

高校に行きながら通信制の専門学校に入学し、卒業後はおやじさんの紹介で、お師匠さんの元につかれます。

理容室のおやじには卒業してから会ってないですね。独立したら挨拶に行こうと思とんです。」

小林さんははにかみながら言います。

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「これでいく」と約束した

ほとんど稼ぎがない弟子時代を5年経た頃、お母さまが倒れられました。

母子家庭だった小林さんは、ちゃんと稼げる仕事に就こうと思い、お母さまに相談しました。

「辞めんで」ー ボーナスもない、有給もない、こんなにしんどいなら…

初めは何で理容師なのかと首を傾げていたお母さまでしたが、

手に職を持った小林さんをとても嬉しく思っていることがわかりました。

小林さんが、理容師の弟子から一理容師へ変わった瞬間です。

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(ちょうど、従業員の方の娘さんがスタッフ入りすることが決まった日で、皆さん嬉しそうでした。)

 

「三世代来てくれる理容室がやりたい」

この道18年の小林さんに、初めて切ったお客さんのことを聞いてみました。

弟子時代のこと。練習ばかりでしたが、そろそろ切ってもいいと師匠からお言葉をもらい、

「次来た人、切ります」と言ったその時、ちょうどお客さんが入ってきました。

「しゃべりまくりましたよ。手元を一生懸命隠して!(笑)」

ものすごい緊張の中終了し、感動はその次の月にやってきました。

「初めてのリピーター。心の中で飛び上がりました。あの瞬間も、お客さんの顔も忘れられません。」

リピーターがこなかった時、「髪型が気に食わなかったかな、あのしゃべりが悪かっただろうか」と

小林さんは毎日自問自答するそうです。切ったお客さんを本当に大切にされる方だということがわかります。

「できれば3世代みんな切りたい。遠くに切りに行けないおばあさんも」

「今の常連さんも大切にしたいけど、お世話になった理容室や友人の理容室周辺はダメなんですよ。」

そんなこと言っていたらお店出せる場所なくなっちゃうんじゃ…とこちらが心配してしまうほど、

お客さんだけでなく業界全体のことも想える、義理人情の人。

七条あたりの建物とスタッフを募集されているので、私も全力で応援したいです。

 

(ライター:めい